ときめき

ドストレートな漢(おとこ)

 んもー、まさしく私のオリベッティ(←タイプ※『オリベッティ』という英文タイプがある)。熊本のJリーグ・ロアッソでミッドフィルターとして活躍後、引退し、現在、ロアッソのジュニアサッカーのコーチをしている山口武士さんがそうだ。

 んもー、とにかくきれーなお顔をしてらっしゃる。切れ長の奥二重まぶた、すーっと伸びた鼻梁、鋭角のアゴ、キュッと上がった口角、どことなく東山紀之に似ていて、見ればみるほど「よか男」。もろ、私の好みである。

 今から5年ほど前、彼にインタビューをしたことがあり、そのときすぐさまノックダウンした。今回は、どーしても彼に会いたい!という理由で、M田編集長にゴリ押ししてインタビューが実現。といっても、ライターさんに同行して、私はその隣でヨダレを垂らしていただけで、自分の顔がデレデレといやらしい顔になるのを自覚してきた。

 それにしても山口さんたら、昔とちーっともお変わりないいい男ぶり。それに、私のことも覚えていてくださった。なんとも嬉しや嬉し。約1時間ほど取材にくっついて、名残惜しくお別れしたが、我が家の近所にある競技場に毎週の夕方、練習にやって来るという情報をキャッチ。そんな嬉しいことがあるのかいな。おにぎり差し入れしよーかな、これから寒くなるから、温かいスープなんて喜んでもらえるんじゃないかしらん。

 キムタクも瑛太も好きだけど、間近で見れるわけじゃなし…。そんなところへ山口さんが再登場。もうこーなったら、追っかけするけん、私。秋から燃える目標ができた、ボーッとした夕暮れを送らずにすむってものだ。

 武士(ぶし)と書いて「たけし」と読む。藤沢周平の作品が似合うようないい男だ。

穏やかで優しい物腰の山口武士さん。現役のころの猛々しくスピーディーな攻撃力からは想像ができないほど。インタビュアーの横で、大阪のおばちゃんのごとく、携帯で写真を撮りまくる私。

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時間

 熊本の駅周辺に近い魚屋町界隈。このあたりは、呉服町、細工町、古大工町、紺屋町とその名前にもわかるとおり、城下町の町割りが残るところ。

 先日、仕事で界隈を散策してみた。と、魚屋町に古い時代の建物があった。お茶を教える看板がかけられていたが、その立派なコンクリートの建物は装飾といいデザインといい、この町のシンボリックな匂いがする。

 尋ね聞くと、かつてそこは病院だったらしい。現在もお住まいのようで、可愛い番犬がいる。こんな建物を見ると、中を見てみたくてたまらなくなる。
 ここに、どんな物語が刻まれているのか。どんな時間が過ぎていったのか。急ぎ足のリズムをとめて、しばしたたずんだのだった。

Photo
かつて病院だったというお住まい。景観文化財として指定されている。大切に守り伝えるということは、とても大変なことだろうけれど、こうして残っている姿を見させてもらうのは、なんともありがたい。

Jpg_2可愛い番犬。「チャオ!」とカメラを向けるとこのお顔。キョトンとして可愛いんだ。とってもおりこうさんでした。

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物語

 古い着物を見せてもらった。江戸縮緬の真っ赤な生地に、松、翁(おきな)と媼(おうな)、鶴と亀の染め模様に、細かい刺繍がしつらえてある。

 松の樹皮の表情を玉留めの刺繍で描き、翁や媼の衣装にも金糸で柄が刺され、細かいところまで丁寧に刺繍がほどこされたそれはそれは見事な意匠。

 明治の頃の着物らしい。裄丈(ゆきたけ)が少し小さいので、おそらく少女のために作られた着物だと思われる。中ぶり袖に裾綿入れと、大切に大切に育てられたおひぃ様の衣装だというのが一目でわかる。

 その来歴を想像するほどに、物語が浮かび上がってくるのである。しばし眺めていると、持ち主の奥様が、「何かのご縁を感じるんでしょう?」とおっしゃった。ズバリ、そうなのである。古い着物は随分見てきてたが、この美しい意匠を目の前にすると不思議な縁(えにし)を感じずにはいられないのだ。

 「いつでも見にいらっしゃい」と声をかけてもらって奥様のお宅を後にした。帰りの車の中でもずーっと、真っ赤な生地に描かれた意匠が目に焼き付いて離れない。

 動乱の時代を生きた少女のことを思うと、心がときめく。いつもこのモードに入るときってとても居心地がいい。前世をたどるようで、胸が高鳴る。

真っ赤な江戸縮緬の着物。由緒ある家のお嬢様の着物に違いない。彼女はどんな人生だったのだろう。

共白髪の夫婦円満を意味する翁と媼、松、鶴と亀。縁起のいいものばかり。晴れ着には最高の絵柄がちりばめてある。全て手作業。日本の美しい伝統美。

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雪化粧

 息を呑むほどの美しさだった。阿蘇の五岳が雪をまとって、それはそれは美しい貴婦人のような、おごそかで清廉なたたずまいを魅せていた。

 内牧温泉から上って車窓にその姿をとらえると、思わず「車を停めてっ!」と大声を出して、その荘厳な姿をしばし眺めた。
 嘘偽りのない志し。堂々とした気概。自然に学ぶ、とはそういうことなのだ。ヘラヘラと生きている自分が恥ずかしくなる。

 熊本って本当に素晴らしいと思う。この雄大な自然をこんなに近くに感じて暮らせるなんて、私たちはなんと幸せ者なのだろう。

Jpg 雪をいただいた山。頂に雲が、懐に霧が…。幻想的な自然美にしばし見入った。

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アトリエ構想

 ステキなアトリエに遭遇。長湯温泉郷(大分)の『B・B・C(ベッド&ブレックファースト&カルチャー)』という別荘スタイルの宿泊施設の中にある図書館がそう。

 旧英国の文化に憧れた時代に建てられた日本の洋風建築物のそれで、長崎のグラバー邸や神戸の異人館、函館の山手界隈の洋館のテイストが漂っていた。

 夢は、ステキなアトリエを持つこと。これまで収集した書籍やステーショナリー、雑貨に囲まれて気持ちよく仕事をしたいとかねがね思っている。
 大切にしたいイメージは「大正時代の匂い」だったが、具体的なデザインや構想がいまひとつ鮮明にならなかった。

 『B・B・C』の図書館に入るやいなや、これだ!と確信。こんな環境ならば、もっとましな原稿が書けるだろう。集中力をもって仕事ができるだろう。一日の中で最も長く過ごす仕事場での時間を大切にできるだろうと、とそんなことを考えてた。

 なんだか目標が定まったようでワクワクしてくる。いや、ずっと一生懸命になるものを探していた気がする。アトリエを作ろう!元気に動き出せるきっかけを見つけたようで嬉しくなる。あとは金銭的な問題だけだが…。宝くじ、買おうかな。

2jpgまさに理想的なアトリエ。こうやって天上高くまでコレクションを積み上げてみたい。小窓のデザインもステキで、こういう環境で仕事がしたい!

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図書館の外観。冬枯れの木立の風情もまたいい。宿泊施設より図書館に釘付けになってしまった。

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詩情

 冬の長湯温泉(大分県竹田市)。大気が澄んだ山間の温泉郷の真ん中を流れる芹川。おとなしい流れは日差しをやわらかくうつし、河原の小石をつたってセグロセキレイが水に光に戯れる。その水鳥の愛らしい姿を天満橋のたもとの茶屋から眺めていた。

 ストーブの火で暖まった部屋の油の匂いを断ち切るように、挽き立ての珈琲のアロマが鼻孔を抜けていく。ソーサーにカップを置いて砂糖菓子を口に含めば、冬の光の中に甘い翳りが忍び寄ってくる。苔色のベルベッドのソファのスプリングがきしんで、たちまち私は琥珀色の物語の入り口に立っていた…。

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 書生は天満橋をさしかかろうとして、島田を結った一人の女人が河原の湯壺で湯浴みするのを目にとめた。ほどよく肉のついた白くなまめかしい女体。全くの警戒心もなく女は、炭酸泉の泡を救うようにして頬に首にと湯をあてる。白い両腕を空にかざして女が笑うと、ふくよかな乳房が見えて、湯壺は広がる波紋のように幾重にも弧を描いた。

 この世のものではない光景だ…と書生は思った。天女が迷い落ちたのか、それとも鬼子母神の夜叉のきまぐれに遭遇したのだろうか。日差しが川に反射して女の横顔を光でふさいだ。冷たい風が河原を越えるようにして冬枯れの木立の枝を揺らす。山鳩がひと声鳴いて、女は彼の姿に気づいた…。

Photo_5   私はいつのまにか異次元の中にいた。つらつらと虚構の物語に引きこまれながら、あわててその映像を取材ノートに書き留めた。

 ここには豊かな詩情がある。もしかしてそれは、地霊のしわざかもしれないとも思う。心を刺激したのは茶屋に飾ってあった谷川俊太郎の手書きの原稿だった…。

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黙っているのなら 黙っていると言わねばならない

書けないのなら 書けないと言わねばならない

そこにしか精神はない たとえどんなに疲れていようと

一本の樹によらず 一羽の鳥によらず 一語によって私は人

 人間には、そのときどきの思いを言葉に文字にする能力を与えられている。悶々とした思いを無性に描きたくなるも「一語」が見つからない。もどかしさと高揚感のはざまで「詩情」だけに心を揺さぶられて…。

                               冬の長湯温泉にて

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